こんにちは。KOMACHIマガジン編集部の長谷川です。
GEOだのLLMOだの、AI検索対策の情報が毎週流れてきます。その中には効く施策と効かない施策が混ざっているのですが、見分けるための一番の近道は、個別のテクニックを覚えることではなく、AIが答えを作る仕組みをひとつ下のレイヤーで知っておくことです。仕組みが分かれば、新しい施策を聞いたときに「それはこの仕組みのどこに作用するのか」で真偽をだいたい判定できるようになります。
エンジニア向けの説明は世の中にたくさんあるので、この記事はマーケター向けに、答えが作られる過程を順番に追います。
AIの答えの材料は、2種類ある
大枠から。AIチャットの答えの材料は2種類しかありません。訓練の時に覚えたことと、その場で調べたことです。
1つ目は訓練です。AIモデルは大量のテキストから言葉のつながりを学習していて、この段階で覚えた知識はモデルの内部に焼き込まれます。ただしこの知識には弱点が2つあります。訓練を終えた時点で止まっているので新しいことを知らない。そして、覚えていないことをそれらしく埋めてしまうことがある(いわゆるハルシネーション)。
だから主要なAI検索は2つ目の材料を足しました。質問を受けたその場でウェブを検索し、見つけたページを読んで、それを根拠に答えを組み立てる。回答に引用リンクが付くのはこの仕組みが動いているからです。マーケターにとっての主戦場はこちらです。訓練データに入る・入らないは短期ではコントロールしづらいですが、その場で調べられる先——つまりウェブ上のページ——は今日から手を入れられます。

「その場で調べる」は、5つのステップで動く
引用付きの回答が返ってくるまでを分解すると、だいたいこの5段階です。
ステップ1 質問を受け取る。 ユーザーが文章で質問します。検索キーワードより長く、条件や文脈を含むことが多い。
ステップ2 検索クエリに分解する。 AIは質問をそのまま検索窓に入れません。複数の検索クエリに分解して同時に走らせます。Googleはこれをquery fan-outという名前で公式に説明していて、AIモードは「質問をサブトピックに分解し、多数のクエリを同時に発行する」と明言しています。1つの質問の裏で、見えない検索が束になって走っている。
ステップ3 検索インデックスから候補を取る。 ここで各社の依存先が分かれます。GoogleのAI OverviewsとAIモードはGoogle検索のコアランキングをそのまま土台にします(公式ドキュメントが「依然としてSEOである」と書くのはこのため)。ChatGPTは公式にBingとShopifyとの提携を明記しつつ自前のクローラも併用。Perplexityは数千億ページ規模と説明する独自インデックスを持ちます。どのAIも、検索インデックスに入っていないページは原則として候補にすらなりません。 基礎のSEOが前提になるのは、この構造のせいです。
ステップ4 候補から選抜する。 束になったクエリに対して返ってきた候補ページの中から、実際に読む・引用するページが選ばれます。Ahrefsが140万プロンプトで実測した範囲では、この選抜を強く左右していたのは、AIが生成した検索クエリとページタイトルの意味的な一致度でした。順位も無関係ではありませんが、外部のAIチャットではGoogleトップ10との重なりが平均12%しかない、という実測もあります。順位より意味。ここが従来のSEOとの一番の分かれ目です。
ステップ5 読んで、要約して、引用を付ける。 選ばれたページの内容を根拠に回答が生成されます。このとき数字・条件・出典のような「借用できる事実」を持つページが引用されやすいことは、複数の実験で確認されています。

裏方の登場人物。3種類のロボットがいる
もうひとつ、仕組みの理解に欠かせないのがクローラ(ウェブを巡回するロボット)の役割分担です。OpenAIを例にすると、公式に3種類が定義されています。
- 学習用(GPTBot)——訓練データを集める。拒否すると将来のモデルの学習から外れる
- 検索表示用(OAI-SearchBot)——ChatGPTの検索回答に載せるためのクローラ。拒否すると回答に表示されなくなる
- ユーザー起点(ChatGPT-User)——ユーザーがその場でURLを開かせたときのアクセス。robots.txtが効かない場合があると公式に明記
AnthropicもPerplexityも同様の役割分担を公式に定義しています。Googleの場合はさらに独特で、Google-Extendedを拒否してもGeminiの学習を止められるだけで、AI Overviewsからは消えません(消すには通常検索の露出ごと犠牲になります)。「AIをブロックする」という一括りの判断は存在せず、学習・検索表示・その場のアクセスのどれを制御したいのかを分けて考える必要があります。
技術面の注意もひとつだけ。主要なAIクローラはJavaScriptを実行しないことが大規模なログ実測で確認されています(例外はGoogleのインフラを使う系統)。人間には見えてもAIには存在しないコンテンツ、というものが実際にあります。

この仕組みから、施策の真偽を判定してみる
冒頭の話に戻ります。仕組みの5ステップと照らすと、施策の筋の良し悪しが見えてきます。
- 基礎SEO(インデックスされる・クロールできる) → ステップ3の入場券。効く、というより前提
- 質問の言葉で見出しと本文を書く → ステップ4の意味一致に直接作用。効く
- 数字・出典・事実の密度を上げる → ステップ5の引用選抜に作用。実験の裏付けあり
- llms.txtの設置 → どのステップにも作用する経路が公式に存在しない(Googleは不使用を明言、実測でもAIボットはほぼ読みに来ていない)。現状は優先度を上げる根拠なし
- AI向けの特殊なマークアップやチャンク分割 → 同上。Google公式が不要と明言
新しい施策の話を聞いたら、「それは5ステップのどこに作用する話ですか」と聞いてみてください。答えられない施策は、たいてい急がなくていい施策です。

まとめ
AI検索の答えは、訓練で覚えたことと、その場で調べたことの2つの材料でできています。その場の検索は、質問の分解、インデックスからの取得、意味による選抜、引用付きの生成、という流れで動く。だから実務の柱は、インデックスに入ること、質問と意味で一致すること、借用できる事実を持つこと、そして機械が読める形であること。
仕組みはこの先も細部が変わり続けます。ただ、レイヤーで理解しておけば、次の新しい略語が来ても慌てずに済みます。テクニックの暗記より、仕組みの地図を。
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