こんにちは。KOMACHIマガジン編集部の長谷川です。
今週、マーケティングの界隈で一つの数字が流れてきました。「Google検索の上位リンクと、AIが引用するソースの重なりは、70%から20%未満に落ちた」。米メディアAxiosが2026年7月16日の記事で、GEO計測企業の調査として紹介したものです。
額面どおりなら大きな話です。検索で上位を取ればAIの回答にも引用される、という前提が崩れたことになる。SEOの予算を見直せ、という声も出はじめています。
ただ、言葉だけを見ると「SEOの時代が終わった」ように見えるこの数字、出所を追いかけて、確認できるデータで組み直してみると、見え方がだいぶ変わりました。今日はその顛末を書きます。
💡 KEY MESSAGE
話題の70%→20%は、出所に辿り着けない数字。確認できるデータが示すのは「Googleの中のAIは弱まりつつも上位依存、外部AIチャットは最初から別世界」という二層構造。打ち手も二層で持つ。
その数字、どこから来たのか
まず出所です。Axiosの記事は「GEO企業Brandlightの調査」と書いています。ところが、Brandlightの公式ブログを遡っても、70%→20%という数字は見つかりませんでした。
たどり着けた最古の文書は、米PR会社5WPRが2026年4月に出したレポートです。そこには、GEO企業Brandlightが「Google上位ページとAI引用ソースの重なりが70%から20%未満に低下し、なお低下中」とする分析を公表した、と書かれています。ただしこの記述に、脚注もリンクもありません。いつの分析なのか、どのAIを何件調べたのか、どこにも書かれていない。
さらに引っかかることに、Brandlight自身のヘルプページには「AI ModeとGoogleトップ10のドメイン重複は54%」という別の数字が載っています。70が20になった、という話とは噛み合いません。
付け加えると、この数字を広めた5WPRはGEOコンサルティングを売るPR会社で、レポートの結びは自社サービスの案内です。Brandlightも、GEO計測ツールのベンダーです。「SEOとAIの重なりが崩壊した」という物語は、両社の商材と相性がいい。数字が嘘だと言いたいのではありません。ただ、手法も時点も確認できない数字で自社の戦略を動かすべきではない、とは言えます。
確認できるデータで組み直す
では、原典まで確認できる調査は何と言っているのか。当たれたものだけを並べます。
| 調査(時点) | 測ったもの | 結果 |
|---|---|---|
| Ahrefs(2025年7月・AI Overviews 100万件) | AIOの引用×検索トップ10 | 引用の76%がトップ10内 |
| Ahrefs更新(2026年3月・引用URL 400万件) | 同上 | 38%に低下。トップ100圏外が37% |
| seoClarity(2025年10月・36万クエリ) | 同上(単位が2つ) | クエリ単位では94%が重なる。引用単位では32% |
| Ahrefs(2025年8月・1万5,000クエリ) | ChatGPT等の引用×Googleトップ10 | 平均12%(Perplexityのみ29%) |
見えてくるのは、単一の数字ではなく、二つの別のゲームです。
Googleの中のAI(AI OverviewsやAIモード)は、今も検索上位に寄りかかっています。ただし、その度合いは下がってきた。 Ahrefsの実測では、AI Overviewsの引用のうち検索トップ10に入るページの割合は、2025年7月の76%から2026年2〜3月には約38%まで下がりました。Ahrefs自身が「AIOは直接の検索結果への依存を減らしている」と書いています。
外部のAIチャット(ChatGPTなど)は、最初から別世界です。 同じAhrefsが1万5,000クエリで測ったところ、ChatGPT・Gemini・Copilotの引用のうちGoogleトップ10に入っていたのは平均12%。引用の80%は、元のクエリでGoogleのどこにもランクしていないページでした。この調査の結論は一文に要約されています。「AI OverviewsはSERPに従う。AIアシスタントは従わない」。
つまり、仮に「70→20」が何かを測った数字だとしても、Googleの中と外を混ぜた時点で意味を失います。混ぜてはいけない二つを混ぜた平均値ほど、物語として便利で、実務の役に立たない数字はありません。

「重なり」は数え方で30%にも90%にもなる
もう一つ、この領域の統計を読むときの罠を共有しておきます。同じ調査の中に、まったく違う顔をした数字が同居するんです。
seoClarityが36万クエリで測った調査では、クエリ単位で見ると「AI Overviewsの引用と検索トップ20が最低1つ重なるクエリ」は94%。ほぼ全部です。ところが引用単位で見ると、トップ10と重なる引用は32%しかない。同じデータです。重なりの有無を聞けば94%、引用の何割が上位かを聞けば32%が返ってくる。
BrightEdgeのように「重なりはむしろ増えている(32%→54%)」という逆向きの調査もありますが、これは「トップ10」ではなく「オーガニック全体」との重なりで、そもそも定義が違います。さらに言えば、SparkToroのRand Fishkinは、同じ質問を100回投げてAIの推薦が一致する確率は1%未満、という測定を示しています。AIの回答自体が揺れる以上、一発測定の数字はなおさら幅を持って見る必要があります。
要するに、「重なり」は定義と数え方で30%から90%超まで動く。単位(クエリか引用か)、範囲(トップ10か全体か)、対象(どのAIか)を確認せずにこの手の数字を受け取ると、どんな結論にも誘導されえます。

Googleの中と外で、別のゲームが進んでいる
データを踏まえると、話は整理できます。
Googleの中のAIについては、Google自身が答えを出しています。 2026年5月公開の公式ガイドは「生成AI検索への最適化は、依然としてSEOである」と明言し、AIの回答生成がコアの検索ランキングシステムを使ってページを取得すると書いています。ただし同時に、query fan-out(ユーザーの1つの質問を、複数の関連検索に分解して裏で走らせる仕組み)も明記されました。あなたのページが引用されるかは「その1クエリでの順位」だけでは決まらず、分解された多数のサブクエリのどれかで拾われるかにもかかっている。76%から38%への低下は、この構造変化と整合的です。
外部のAIチャットは、順位ではなく「言及」の世界です。 Ahrefsの140万プロンプト分析では、引用を最も強く分けた要因は、質問とページタイトルの意味的な一致度でした。そしてMuck Rackが100万件超のAI引用を分析した結果では、引用の82%がearned media、つまり自社サイトではなく第三者メディアでの言及や報道でした。Ahrefsの7万5,000ブランド調査でも、Web上のブランド言及は、AI上の可視性とバックリンクの3倍強く相関しています。
ちなみに「構造化データを足せばAIに引用されやすくなる」という説は、Ahrefsが約1,900ページの統制実験で検証して、どのAIプラットフォームでも引用の増加を確認できませんでした。Google公式ガイドの「特殊なスキーマは不要」という記述とも一致します。ここに予算を寄せるのは、現時点のデータでは支持されません。
以前の記事の、答え合わせ
2026年5月にGoogleの公式ガイドが出たとき、僕はAEO/GEOはSEOと同じ──マーケターが今すぐ動かすべき3つの優先順位という記事で「SEOの延長」と書きました。今回の数字とは矛盾しないのか。読み返して、答え合わせをしておきます。
当時の記事には、こう書いていました。今回のガイドが直接の対象にしているのはGoogle検索の生成AI機能で、他のAI検索エンジンは別の仕組みで動いているから、結論がそのまま当てはまるとは限らない、と。この線引きは、今回のデータで裏づけられた形です。Googleの中はSEOの延長(ただし依存度は低下中)、外は別のゲーム。
一方で、当時「特別な対策に時間を使わない」と書いた優先順位には、補強が要ります。llms.txtやチャンク分割のような技術的な小細工が不要なのは変わりません。ただ、外部AIチャットのゲームでは、第三者メディアでの言及獲得、つまり昔ながらの広報・PRに近い動きが効く、というデータが積み上がってきました。ここは当時より一歩進めておきます。
実務は二層構えで
確認できるデータが支持する動き方は、こうなります。
- 基礎のSEOは削らない。 Googleの中のAIは今もコアランキングを土台にしている(公式明言)。AI Overviewsの引用も、減ったとはいえ4割弱がトップ10からです。
- 外部AIチャット向けには、言及される場所への露出を足す。 業界メディア、レビューサイト、第三者の報道。引用の82%がearned mediaという世界では、自社ドメインの順位だけを磨いても届きません。
- 計測は順位でなく「言及・引用」で持つ。 自社がAIの回答にどれだけ登場するか、どのページが引用されているか。順位のダッシュボードとは別の計器が要ります。
- 出所不明の数字で舵を切らない。 調査主体・件数・時点・数え方が確認できない数字は、どれだけ引用されて回っていても、いったん保留する。

まとめ
「Google上位=AI引用」は、崩壊もしていないし、無傷でもありませんでした。Googleの中では弱まりながら生きていて、外では最初から成立していない。それが、原典まで確認できたデータの示す姿です。
70→20という数字そのものは、出所に辿り着けませんでした。もし手法と時点を示した一次資料が公表されたら、この記事は追記して直します。ただ少なくとも、確認できない数字より、確認できるデータと定義を。判断の土台は、そちらに置くべきです。
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