こんにちは。KOMACHIマガジン編集部の長谷川です。
BtoBの買い手の半分近くが、製品調査をAIチャットから始めるようになりました。ということは、あなたの会社の最初の説明は、もうAIがやっています。何と説明されているのか。競合と比べてどう扱われているのか。そもそも登場するのか。これは自分で確かめられます。ただし、正しいやり方で確かめないと、間違った安心か間違った絶望を持ち帰ることになる。この記事はそのための手順書です。
最初に、一番大事な注意。AIの回答は揺れる
手順の前に、この作業の大前提を数字で共有します。同じ質問をしても、AIは毎回同じ答えを返しません。
SparkToroのRand Fishkinらが2025年11〜12月に行った調査では、600名のボランティアが12種類の質問をChatGPT・Claude・GoogleのAIに計2,961回投げました。結果、同じ質問に対して同じブランドのリストが返ってくる確率は100分の1未満。順序まで一致するのは1,000回に1回のレベルでした。学術側でも、ザンクト・ガレン大学の研究チームが2026年4月に発表した論文で、AI検索の引用ソースは約65%が翌日には入れ替わること、しかも同じ日に数分空けて再実行しただけでも大きく揺れること(揺れの主因は時間経過ではなくモデル自体の確率性であること)を報告しています。
つまり、1回聞いて自社が出てきても、それは安定した露出を意味しません。出てこなくても、存在しないことを意味しません。この手順書のゴールは1回の答えではなく、揺れの中の傾向を取ることです。ここを外すと、以降の全部が無意味になります。

手順1 質問セットを作る(3類型×10〜20本)
まず、AIに投げる質問のリストを作ります。GEO計測ツール各社が公開している方法論は、ほぼ同じ3類型に収束しています。
- 想起系(ブランド名を入れない) — 「10人規模のBtoB企業におすすめのSEOツールは」「記事作成を内製化できるサービスは」。自社が“聞かれてもいないのに出てくるか”を見る質問。計測ツールProfoundは、ブランド名なしのカテゴリ質問を中心に据えるべきだと公式に書いています
- 指名系(自社名を入れる) — 「(自社名)とはどんなサービスか」「(自社名)の評判は」。AIが自社を何と説明するか、その説明が正確かを見る質問
- 比較系 — 「(自社名)と(競合名)はどちらがいいか」。比較の文脈でどちら側に倒されるか、判断根拠に何が引用されるかを見る質問
質問の素材は、営業やサポートが実際に受けている質問、SEOで狙っているキーワードの文章化、問い合わせフォームの文面です。検索キーワードの形ではなく、人がチャットに打つ長い文章の形で書くのがコツです。Semrushは最初は25本程度から、と案内しています。手動なら10〜20本で十分です。

手順2 環境を整えてから聞く
ここを飛ばすと、せっかくの確認が台無しになります。普段使いのChatGPTで聞いてはいけません。
OpenAIの公式ヘルプに明記されていますが、ChatGPTの保存されたメモリは常に回答の文脈に入り、削除しない限り将来の回答で考慮され続けます。さらにメモリや過去のチャットは、検索クエリの書き換えにも使われます。あなたが日頃から自社の情報をChatGPTに入れていれば、AIはあなた向けに答えを寄せてきます。それは顧客が見る回答ではありません。
対策も公式に用意されています。一時チャット(Temporary Chat)はメモリを使わず、新しいメモリも作りません。 確認作業は必ず一時チャットか、ログアウト状態・別アカウントで行ってください。なおIPアドレスに基づく大まかな位置情報も検索結果に影響するとOpenAIは説明しているので、回答に地域性が混ざる可能性も頭に入れておきます。
そして回数です。先ほどの論文は、ブランドの可視性を監視するなら1つの質問につき1日最低7回の実行を推奨しています。手動では非現実的なので、手動版の現実解はこうです。各質問を最低2〜3回、できれば日を変えて実行し、毎回出てくるのか、出たり出なかったりするのかを分けて記録する。 安定して出る・コインフリップ・出ない、の3値で捉えるだけで、1回測定の落とし穴はほぼ避けられます。

手順3 どこで確認するか(プラットフォーム別)
引用や言及の確認場所は、プラットフォームごとに違います。2026年7月時点で確認できた公式仕様はこうです。
- ChatGPT — 検索が発動した回答には本文中にインライン引用が付き、ホバーで詳細、クリックで出典に飛べます。インライン引用がない場合も回答下部のSourcesボタンで引用元パネルを開けます。検索機能は無料ユーザーでも利用可能。ただしChatGPTは常に検索するわけではない(検索なし=訓練知識だけで答えている回答もある)ので、引用の有無自体も記録対象です
- Perplexity — すべての回答に番号付き引用が付き、クリックで元ソースへ。無料でも1日限定回数のPro検索が使えます
- GoogleのAI Overviews/AIモード — AI Overviewsは日本では2024年8月から、AIモードは2025年9月から日本語提供。回答内のリンクから引用元を確認できます
- Gemini — 回答の下または回答内のソースボタンから関連リンクをサイドパネルで確認
- Copilot — 回答内のクリック可能な引用と、Show allで参照元の一覧表示(2025年11月の公式アップデート)
全部やる必要はありません。自社の顧客が使っていそうなものを2つ選べば十分です。BtoBならChatGPTとGoogle(AIモード/AI Overviews)が起点になるはずです。
手順4 スプレッドシートに記録する
記録項目はシンプルでよくて、1行1実行でこう取ります。
日付 / プラットフォーム / 質問 / 自社への言及の有無 / 文脈(推奨された・中立に並んだ・否定的・事実誤認あり) / 引用されたURL / 一緒に出てきた競合名
特に大事なのが「文脈」と「競合名」です。言及の有無だけだと、誤った説明で登場しているケース(一番対処が必要なやつ)を見逃します。競合名の列は、AIの中の競争環境マップとして数週間分溜まると急に価値が出ます。頻度は週1回、まとめての月次レビューで傾向を見る。先ほどの論文も、日々の揺れをならすために2〜4週間のローリング集計を推奨しています。

手順5 見つけたものへの対処
確認して終わりでは意味がないので、パターン別の次の一手です。
- 事実誤認で説明されている — AIの回答そのものは直せませんが、引用元は直せます。引用URLを見て、そこが自社の古いページなら更新、第三者の古い記事なら訂正依頼。AIの誤りの多くは、ウェブ上の古い事実の忠実な引用です
- 想起系の質問で出てこない — 自社サイトの最適化だけでは届かない領域です。第三者媒体での言及を増やす動きが本筋になります(このテーマは別の記事で詳しく書きます)
- 競合ばかり推奨される — 比較系の質問で引用されているソース(比較記事・レビューサイト)を確認し、そこに自社の情報が正しく載っているかを見にいく
手動の限界と、その先
正直な話もしておきます。この手動チェックは、始めるには最良ですが、続けるには向いていません。論文の推奨(1質問7回/日)を20質問×2プラットフォームで満たすと1日280回の実行になります。人間のやることではない。
だからこの領域には専用の計測ツールカテゴリが立ち上がっていて、数十〜数百の質問を機械的に投げ続けて言及率・引用率を出す方式が標準になりつつあります。SparkToroのFishkinも、数十〜数百プロンプト×複数回で可視性のパーセンテージを測るのは妥当な指標だと述べています(逆に、AI内の「順位」を出すツールは眉唾だ、とも)。KOMACHIでも言及率・引用率をKPIにするGEO機能をこの思想で開発中です。まず手動で現在地を見て、継続監視が必要だと分かったら道具に乗り換える。その順番で十分です。
まとめ
AIの回答は揺れます。だから、正しい確かめ方は「1回聞く」ではなく「設計した質問セットを、素の環境で、複数回、記録しながら」です。3類型で10〜20本、一時チャットで2〜3回ずつ、言及・文脈・引用URL・競合名をシートに。2〜4週間で、AIの中の自社の姿が傾向として見えてきます。
知らないうちに始まっているAI上の一次商談を、まず観測可能にする。打ち手の議論はそこからです。
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